ジェスモナイトは、従来の不飽和ポリエステル樹脂(ポリ樹脂、FRP樹脂などと呼ばれる)の安全な代替として1984年に生まれた完全水性の素材です。
ポリ樹脂と同様に、ガラス繊維を使ったハンドレイアップ(FRP:繊維強化プラスチック)工法が可能です。また小型~大型の注型も可能です。
では具体的にどのような点が違うのか整理してみます。
ジェスモナイトのデメリット(ポリ樹脂のメリット)
- ポリ樹脂に比べて強度が低い(ポリ樹脂と同程度の強度を出す場合厚くする必要がある。特に車やバイクのエアロパーツ制作や、人がかぶって使用するマスク制作のような、薄さ&軽さ&弾性が求められる用途にはジェスモナイトは不向き)
- 硬度が高く、弾性がほぼない。(過度な衝撃や力が加わった際に、たわんで耐えるのではなく硬いため、逆に表面の破損につながりやすい)
- ポリ樹脂に比べて比重が重い(ジェスモナイトAC100比重1.75、ポリ樹脂比重1.1~1.4)
- ポリ樹脂に比べて価格が高い
- 透明はない(透明な樹脂が必要な場合は、ポリ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを選択)
成型物の軽さと強度の面でいうとポリ樹脂が圧倒的に優位です。あんなにも薄く強度がある造形物を制作することが可能なのは、ポリ樹脂の大きなメリットです。ジェスモナイトがFRPの安全な代替えとはいえ、これまでの造形仕事が全て置き換えられるわけではありません。
その他、価格面も日常使いにはかなり重要な点ですが、ジェスモナイトの場合は専用換気設備の初期投資が不要であり、またアセトンや防毒マスクと吸収缶などの日常的なランニングコストが不要な点も考え合わせると価格面での差は縮まってきます。さらにプロの現場作業の場合は、有機溶剤の使用が許可されない現場があること、また日中に作業ができない場合などに作業者の深夜割増賃金や現場への排気ダクト設営などを考えると、素材価格以外の様々な要素がありえます。
ジェスモナイトのメリット(ポリ樹脂のデメリット)
- 毒性がないため健康面で安全(一般的なポリ樹脂にはスチレンという特定化学物質が含まれており、発がん性、その他の健康懸念が指摘されているため、特定化学物質障害予防規則によって適切な局所排気装置の設置や、保護具の着用、作業記録の作成、特殊健康診断などが指導されている)
- 引火性・発火性がないため火災・火傷面で安全(硬化熱がそれほど高くないため、一気に大量の注型をすることも可能。同じ理由で、バックアップを一気に分厚く何層も貼り込むことも可能)
- 毒物・劇物・危険物に該当しないため保管場所に制限がない
- 作業時にほとんど匂いがなく有毒ガスが一切出ないため、住宅街の工場やアトリエ、さらにはオフィス内・家庭内などの環境でも作業が可能(ただし、粉を使用するため使用時の粉塵には注意、またガラス繊維を使用する際には注意が必要。ガラス以外の繊維で代用も可能。)
- 道具が全て水洗い可能
- 硬化時に全く収縮しない。大物制作の際には特に有効
- 耐UV面で、ポリよりも黄変や劣化が起きにくい
- ポリ樹脂とは違い、塗装を前提としない質感表現も可能
メリットとして一番大きいのは、やはり有機溶剤がないことに伴う安全面です。
常に使用する人にとって、作業時の臭いがなく身体的に楽に作業が可能で、長年続けていくうえで毒性による健康不安
を抱えずに使用できる利点は計り知れません。
工業エリア以外の住宅密集地に工房やアトリエがある場合、臭いによる周辺住民への環境問題が起きにくい点もメリットです。個人の制作者・アーティストにとっても、独立した制作環境の確保が難しい場合や、お子さまの誕生など家庭環境に変化があった場合など、作業者本人だけでなく家族や周りの人々の安全確保は最重要です。
また、初めて樹脂を扱う人が多い美大等の教育現場では、ポリ樹脂の硬化剤入れ過ぎなどミスによる火災事故が時折起きています。そういった火災の危険がないことも学生・教員にとって安心材料です。
造形業などプロの現場においては換気設備や身体保護具は正しく運用されていると思いますが、それでもなおスタッフの健康に配慮した安全な環境であることは、求人の面からも今後ますます重要視されていくでしょう。また社会全体でエコやSDG’sなど、環境への関心・配慮が従来とは比較にならないほど高まってきています。持続可能な社会を目指す先進的な企業ユーザにとって、毒性のない安全な素材を採用することは重要視されています。
さて、ここまで色々な面からメリット・デメリットを比較して説明してきました。
(ここはジェスモナイトLABなのでどうしてもジェスモナイトのアピールが多くなっていますが)
上記に書いたこと以外にも、特性や作業性など細かい相違はまだたくさんあります。
表現したい内容、求められるスペック、作業環境、コスト、様々な要因で使用素材は決まります。
慣れた素材だけを盲目的に使うのではなく、それぞれの素材の特性と長所短所を理解したうえで、案件に応じて最適な素材を選択していただくことが一番大事になると思います。
個別の案件による様々な条件を考えたうえで、ジェスモナイトに限らず条件に合う最適な樹脂材料を提案してほしい、などの材料相談も承ります。ポリ、エポキシ、ウレタン樹脂の販売も可能です。
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